1. ブルー・オーシャン戦略とは何ですか?

キム氏&モボルニュ氏:  ブルーオーシャン戦略とは 、企業と顧客の両者への価値を上昇させることにより、競争を無意味なものにする戦略です。


2. レッド・オーシャンとは何ですか?ブルー・オーシャンとは何のことでしょうか? また、なぜ赤と青という色を使っているのですか?

キム氏&モボルニュ氏:  市場全体を説明するのに赤と青という色を使います。レッド・オーシャンとは今日の産業すべてを表します−つまり、既知の市場空間のことを言います。レッド・オーシャンでは各産業の境界はすでに引かれていて、誰もがそれを受け入れています。競争のルールも広く知られています。各社ともライバルをしのいで既存のマーケットの中で多くを奪い取ろうとしていますが、競争相手が増えるにつれて、利益や成長の見通しは厳しくなっていくわけです。製品のコモディティ化が進み、競争が激しくなっていくために、レッド・オーシャンは赤く血に染まっていくのです。というわけで、「レッド・オーシャン」という表現を使っているのです。

対照的に、ブルー・オーシャンとは今はまだ存在していない市場−つまり、競争すら存在しない未知の市場空間のことを指しています。ブルー・オーシャンでは企業は新たに需要を掘り起こそうとするため、利益の伸びも大きく、また、スピードも速いのです。ブルー・オーシャンでは競争は成り立ちません、なぜならルールも決まってないからです。ブルー・オーシャンという表現は未だ誰も足を踏み入れたことのない、より広い、より深い可能性を秘めた市場を指しています。利益の成長、無限の可能性という意味で広大で深く力強い自然の「青い」海のようであるという表現です。


3. 根本的にブルー・オーシャンはレッド・オーシャンと何が違うのでしょうか?

キム氏&モボルニュ氏:  市場で生き延びていくために、レッド・オーシャン戦略者たちは競争の中で確かな地位を築くことでライバルより有利な状況を作ろうとします。通常は、競合他社がどんなことをしているのかを分析し、より良いことをしようと奮闘(競争)するのです。限られたパイのなかでより多くのシェアを獲得しようとするのは、ある企業が利益を取れば別の企業が損をしているというゼロ・サムゲームに過ぎません。つまり、成長に限りがあるレッド・オーシャンを分割することに集中しているのです。このような戦略の考え方のもとでは、企業がマーケットへの参入を検討する際に、産業を魅力的なものとそうでないものに分け、それにしたがって参入するかどうかを決定するといった方向に導いてしまいます。

ブルー・オーシャン戦略者たちは、市場の境界はマネージャーの頭の中にしか存在しないということに気付き、既存のマーケット構造に考え方を制限されません。彼らは未開発の需要が市場にあるはずと考えています。問題はどのようにそれを作り出していくかなのです。このためには、着目点を供給から需要へと、競合他社との競争から、新しい需要を見つけ出すための価値の創造(バリュー・イノベーション)へと移す必要があります。これは差別化と低コストを同時に行なうことによって達成することが可能です。

ブルー・オーシャン戦略のもとでは、魅力のある産業、魅力のない産業というような区別はほとんどありません。なぜなら、企業の誠実な努力によって産業の魅力の度合いは変えることができるからです。「価値と低コストとトレード・オフの関係にある」というものを打ち破ることでマーケットの構造が変わるのであれば、ルールにも同じことが言えるのです。そして、旧来の土俵での競争は意味のないものになっていくのです。需要を押し広げていくことによって、新しい財産が築かれるのです。このような戦略は企業をゼロ・サムゲームではなく、大きな利益の可能性へと導いていくのです。


4. 教授が言われるようにブルー・オーシャンでは利益が増えていくのであればなぜ世の中の経営者(CEO)たちはレッド・オーシャンに集中しているのでしょうか?

キム氏&モボルニュ氏:  ブルー・オーシャンとレッド・オーシャンは今までも共存してきました、そしてこれからもしていくでしょう。ですから、実際、企業は両方のタイプの戦略理論を理解することが必要です。しかしながら、レッド・オーシャンで戦うための理論に焦点が当てられ、それらが主として実行されているのが現実です。この現実を説明する理由の一部は、企業戦略の歴史的な基礎である戦争−領域は一定の範囲に限られ、そのすでに存在している限られた領域の中で自らのテリトリーを広げるために戦う−のなかに見て取ることができます。このすでに存在している市場の中での競争という概念は、1970年代、80年代に日本の急成長によって衝撃を受けました。グローバル市場での競争は激しさを増し、顧客(買い手)はぞろぞろと欧米の企業から離れていくという、企業史において、初めてと言っても過言ではない事態に直面し、戦略の考え方の中心がさらに競争へ進みました。競争が企業の成功・失敗の中心にあり、競争の企業活動が利潤を得るものであるかどうかの妥当性を決定するという競争ベースの戦略がたくさん生まれました。

その結果、既存業界の経済構造をどう分析すればよいか、低コスト、差別化、フォーカスといった戦略のどれを選ぶべきか、競合他社との比較はどうすればよいのか、などレッド・オーシャンでいかにうまく競争を展開していくかについては十分な理解が得られたといえます。ブルー・オーシャンをめぐる議論も全くないわけではありませんが、ブルー・オーシャンをいかに創造すべきかという点については実用的な手引きはほとんどありません。経営者たちがレッド・オーシャンに焦点をあて続けている多くの理由はここにあるでしょう。レッド・オーシャンは彼らにとってなじみがあり、競争する配備ができていると感じているのです。

「ブルー・オーシャン戦略」ではよく知られているレッド・オーシャンでの競争戦略と同じように、ブルー・オーシャンの創造・支配を体系的で実行可能なものにする方法を見いだしています。ブルー・オーシャン戦略は常に存在していたのですが、ほとんどの場合それらの戦略は無意識に実行されていました。「ブルー・オーシャン戦略」はそれらブルー・オーシャン創造の成功の裏側にある基本とパターンを分析し、それらを実行するためのフレームワークとツールを提供しています。


5. 今日のビジネス界において、なぜブルー・オーシャン戦略が欠かせないものなのでしょうか?

キム氏&モボルニュ氏:  すでに確立されている市場‐つまり、レッド・オーシャンですが−のほとんどは縮小傾向にあります。テクノロジーが発達し、生産性を著しく向上させたことにより、企業は多彩な製品やサービスを生み出せるようになりました。そして、国や地域間の貿易障壁が崩れ、製品や価格についての情報はどこにいてもあっという間に手に入れることができます。ニッチ市場や、独占天国(市場)も消え続けています。同時に、最近の国連の調査によれば人口は減少しており、少なくとも発展してしまった市場では需要が伸びているという事実はほとんどありません。

その結果、多くの業界で供給が需要を上回っています。そのため、製品やサービスのコモディティ化、価格競争、利益率の縮小が加速しています。最近の調査によると、アメリカの主要なブランドの様々な製品やサービスにはドンドン違いがなくなってきており、ブランドが似かよってきているため、消費者は価格を重視して製品の選択をしているとされています。消費者は以前までのように、洗濯洗剤は「タイド」でなくては…とは思いませんし、歯磨き粉も「コルゲート」である必要はなく、「クレスト」が安売りしていれば「クレスト」を「コルゲート」が安ければ「コルゲート」を買うわけです。過密した業界では、景気が良くても、悪くてもブランドの差別化を図るのは難しくなってきています。

過密した業界で製品やサービスのコモディティ化が進み、企業の利益成長が縮小を続けると、企業たちは基本的に価格で勝負をせざるを得なくなります。そのひとつの結果として、企業が大幅なアウトソーシングをするにつれ、中国やインドのような低賃金の諸国での仕事が急増しています。政府が法律を通じてこのアウトソーシングを規制する策を模索している一方で、この方法が長期的な解決策ではないことは、これまでの歴史を見れば明らかです。長期的な解決策は、悪循環なコモディティ化競争から抜け出せるような、人をひきつける製品やサービス企業が作り出すことです。つまい、企業の製品やサービスをレッド・オーシャンからブルー・オーシャンへと移すのです。この事実だけでもブルー・オーシャン戦略が企業の経営者にとって欠かせないものだとわかります。


6. レッド・オーシャンはもう必要ないという意味でしょうか?

キム氏&モボルニュ氏:  そんなことは全くありません。レッド・オーシャンをライバル企業と競い合いながら、うまく泳ぎ続けることはいつの日も重要なことです。レッド・オーシャンは常に重要であるし、ビジネスの世界から決してなくなることはないでしょう。多くの業界で需要が供給を上回っており、その中でのシェア争いが必要になっているなか、それでは好業績を保つことはできません。企業は、競争の先にあるものを見つける必要があるのです。新しい利益機会と成長機会をつかむためにブルー・オーシャンを切り開いていかなくてはならないのです。レッド・オーシャンを突き進みながらブルー・オーシャンを開拓するというバランスが大事なのです。


7. リサーチの中で好業績の企業や産業ではなく「戦略の打ち手」を分析の単位としたのでしょうか?「戦略の打ち手」とはどのような定義に基づくものですか?

キム氏&モボルニュ氏:  ブルー・オーシャンを切り開くための体系的なアプローチがあるかどうか考え始めたときに、わたしたちはまずビジネス文献に使用されている基本的な単位「企業」というものから分析を始めました。しかしながら、歴史を紐解くと永遠のエクセレント・カンパニーというものは存在していません。例えば1982年刊行のIn Search of Excellence(邦訳『エクセレント・カンパニー』大前研一訳、講談社、復刊:英治出版)を考えてみてください。5年以内にこの本のなかで「模範的」として取り上げられた企業の3分の2が下り坂をたどっていきました。同様にベストセラーであるBuilt to Last(邦訳『ビジョナリー・カンパニー』山岡洋一訳、日経BP社) に取り上げられた企業も、後に産業自体が公式からはずされてしまうと、とりわけエクセレントというわけではなくなってしまうことが明らかにされました。Creative Destruction(邦訳『創造的破壊』柏木亮二訳、翔泳社)の中でフォースターとカプランが指摘したように、取り上げられた企業はたしかに優れてはいましたが、その産業全体が好調であったのです。

つまり、常に好業績の企業は存在せず、1つの企業があるときは輝いていて、あるときは迷走しているということが起きるのであれば、「企業」というのは好業績のルーツをさぐる分析単位として適当ではないと考えたのです。同様に永遠に好調の産業というものも存在しません。IT業界を考えてみてください。5年ほど前であれば人々がうらやましがった産業ですが、今日ではほぼ逆になってきているのが現実です。

わたしたちの産業の歴史の調査からは、企業や産業ではなく「戦略の打ち手」がブルー・オーシャンの創造及び利益成長のルーツを説明するのにふさわしいと考えられました。「戦略の打ち手」とはビジネスを提供し市場を開拓するのに伴う、一連の行動や判断のことを指しています。本書で取り上げている「戦略的打ち手」−新しい市場を切り開き、需要を大幅に上昇させる製品やサービスを投入する打ち手−には多くの利益的成長のすばらしいストーリーが含まれています。ブルー・オーシャンが生み出され、好業績をつかみとるパターンを理解するために、30を超える業界で、1880年から2000年までの間に見られた150以上の戦略的打ち手をもとにこの研究は成り立っています。


8. ブルー・オーシャン戦略はどんな業界にも通用するのでしょうか?例えば、消費者から何層か離れているような業界でも通用しますか?

キム氏&モボルニュ氏:  その通りです。ブルー・オーシャン戦略は通常の消費財業界から、BtoB業界、薬品、金融、娯楽、IT業界、さらには自衛隊にもすべての業界に適用できます。「ブルー・オーシャン戦略」では旅行業界のネット・ジェット、市営バスのナビ、セメント業界のセメックス、戦闘機分野のジョイント・ストライカー・ファイターから娯楽のシルク・ド・ソレイユまで多様な、予想もし得なかったような業界での多くのブルー・オーシャンの創造を紹介しブルー・オーシャンがすべての業界で有効であることを明らかにしています。わたしたちの経験は最終的な買い手までいくらかの距離を置いているビジネスにおいて2つの興味深い点を見つけました。はじめに、これらの業界にいる企業はそのビジネスを商品ビジネスと考えがちで、画期的な価値を与える機会が少ないと考えています。これは効果的な自己達成目標(先入観)を生み、これらの企業がビジネスをコモディティーとしてみれば見るほど、コモディティーとして扱うようになっていきます。第二に、最終的な買い手からさらに離れている企業はそのチェーン(連鎖)のなかのすべての企業が顧客になりうるため、画期的な価値を解き放つレバーがたくさんあるわけです。企業が自分たちを取り巻くチェーンの中で、次の顧客に対する画期的な価値を提供する機会を見逃しているのであれば、顧客のさらに顧客、そしてまたその顧客へと価値を提供するチャンスはあるということです。


9. ブルー・オーシャンは新しい企業のためだけのものでしょうか?

キム氏&モボルニュ氏:  ブルー・オーシャン戦略が新しい市場スペースを創造し、市場の動きに変化を与えるからといって、それが必ずしも新参入によって行なわれるものではありません。私たちは過去100年以上にわたるブルー・オーシャンの創造を調査し、注目に値するパターンを研究しました。そして、ブルー・オーシャンは既存の企業、新参入企業にかかわらず、業界の伝統に挑んでいくことでどちらでも作ることが可能であるとわかったのです。新しい市場スペースを築くという点では、新参入企業が既存企業に対し有利な点はあります。車の産業を考えてみてください。1920年代にフォードはエモーショナルでスタイリッシュな車でブルー・オーシャンを作り上げ、70年代には日本企業が小さくて燃費の良い車で、ブルー・オーシャンを築き上げました。また、80年代にはクライスラーがミニバンでブルー・オーシャンを築いています。これらすべては既存企業によって行なわれたものです。さらに言えば、既存企業によるブルー・オーシャンは大抵がその核となる事業内で作られています。事実、ほとんどのブルー・オーシャンは既存業界のレッド・オーシャンの中から生まれてきています。これは新しい市場は遠くにある海原であるという考え方とは異なります。ブルー・オーシャンは業界かかわらず、皆さんのすぐとなりにあるのです。一般的に言われている既存企業の共食いや創造的破壊などは大げさなものであるということが証明されたわけです。ブルー・オーシャンはどんな企業に対しても利益的成長を与えるのです。新しい企業、既存企業もどちらも同じ境遇にあるのです。

私たちの研究は、古くから新しい市場スペース誕生の被害者だと考えられていた大きな会社の経営者たちを勇気付けています。R&D(研究開発)への大きな予算は新しい市場スペースを創造するキーではないということなのです。キーは、正しい戦略の打ち手を打つことなのです。さらに言えば、既存企業であれ、新規参入企業であれ、良い戦略の打ち手を打ち出す方法を理解していれば、時間とともに複数のブルー・オーシャンを創造することができ、継続的な利益成長保つことができるのです。ブルー・オーシャン創造とは企業のサイズや年数ではなく、戦略そして経営行動の賜物と言えるでしょう。


10. ブルー・オーシャン戦略とは新しいものなのでしょうか?

キム氏&モボルニュ氏:  “ブルー・オーシャン“という言葉は新しいかもしれませんが、それ自体は新しいものではありません。100年前には今日の産業のうちいくつが未知のものであったか考えてみてください。自動車、音楽レコーディング、航空、石油化学、ヘルスケア、マネジメント・コンサルティングといった身近な産業は、誕生していなかったか、あるいは産声を上げたばかりでした。また、数十億ドル規模の産業が現れました。投資信託、携帯電話、ガス火力発電、バイオテクノロジー、ディスカウント・ストア、宅急便、ミニバン、スノーボード、コーヒー・バー、家庭向けビデオほか、多数の事例を思い浮かべることができます。たった30年前にはこれらの1つとも産業と呼べるほどの規模のものはありませんでした。

では、時計を20年先、いえ、50年先に進めて、その頃にどれくらいの今走られていないような産業が生まれているか考えてみてください。歴史が未来を予測する要素のひとつであるとするならば、その頃には多くの新しい産業が生まれていることでしょう。